新卒の人や他業界から転職してきた人の中には、不動産営業とは具体的に何をするのか知りたいという方も多いのではないだろうか。
物件を購入した時や借りた時に、不動産会社にお世話になった人もいると思うが、買主や借主としての接点は営業担当者の一部の顔でしかない。
不動産営業には、買主や借主への対応の他、売主や大家への対応の仕事もある。
実は、不動産営業の中では「買主や借主」よりも「売主や大家」への対応の方が重要性は高い。
この記事では、業界未経験者向けに不動産営業の仕事内容や、営業の中でも売主を見つける重要性、不動産営業のコツについて紹介していきたい。
不動産営業の仕事内容とは
仲介が業務の中心となっている不動産会社では、主に「売買仲介」と「賃貸仲介」の2種類の業務を行っている。
売買仲介とは売主と買主をあっせんし売買を決める業務であり、賃貸仲介とは借主を見つける業務である。どちらも専門知識を有するため、一方が簡単で一方が難しいという仕事ではない。
ただし、会社経営側の立場からすると賃貸仲介よりも売買仲介の方が重視されることが一般的となっている。
売買仲介を重視する会社が多い理由としては、得られる仲介手数料が賃貸仲介よりも売買仲介の方が大きいからだ。
仲介手数料は得られる報酬の上限額が決まっており、
売買仲介なら「物件価格の3%+6万円(400万円超の取引の場合)」、
賃貸仲介なら「家賃の1ヶ月分」である。
例えば、物件価格が3,000万円で、家賃が12万円のワンルームマンションがあったとする。
この物件を売買したら仲介手数料は96万円だ、
一方で、賃貸しても仲介手数料は12万円にしかならない。
同じ物件でも仲介手数料は、賃貸するよりも売買する方が得られる報酬は大きくなるため、売買仲介ができる人の方が会社の評価は高い傾向にある。
「売主」を見つけることが重要な理由
不動産営業の中で特に重要なのが「売主を見つけること」である。
売買仲介では、売主側に付いている不動産会社のことを元付業者、買主側に付いている不動産会社のことを客付業者と呼ぶ。
不動産の売買が成立すれば、元付業者は売主から、客付業者は買主からそれぞれ仲介手数料を受領する。
仲介手数料は成功報酬であるため、不動産会社は売主や買主を見つけるだけではなく、最後まで売買を成立させることが何よりも重要となっている。
不動産の仲介では、1つの不動産会社が元付業者にも客付業者にもなることが認められている。
つまり、売主からも買主からも仲介手数料を取ることができ、これを両手仲介と呼んでいる。
それに対して、売主からのみ、または、買主からのみ仲介手数料をもらうことを片手仲介と呼ぶ。
両手仲介は、売主からも買主からも仲介手数料をもらうことができるため、
収益が片手仲介の2倍となる。
よって、不動産会社にとっては両手仲介が多くなるほど売上が高くなる仕組みだ。
ここで、両手仲介は元付業者にならない限りできないことを理解しておく必要がある。
売主を見つけ、元付業者にさえなれば、後は自分で買主を見つければ両手仲介が可能だ。
別の会社が元付業者となっている物件では、自社が客付業者になったとしても片手仲介にしかならない。売主側を元付業者に押さえられてしまっている以上、単なる客付業者は両手仲介を成しえないのだ。
また、元付業者のメリットは”両手仲介ができるだけ”ではない。
元付業者にさえなれば、自ら買主を見つけなくても、他社が買主を見つけてくれれば少なくとも片手仲介はできる。
客付業者は、元付業者に買主のあっせんを断られると、仲介手数料を得るチャンスすらない。
それに対して、元付業者は自社で買主を見つけなくても仲介手数料を得られるチャンスがあるため、収益の確実性は客付業者とは全く異なる。
つまり、売主を見つけ元付業者にさえなれば、少なくとも片手仲介ができるチャンスは高いし、両手仲介ができる可能性も高くなる。
不動産会社にとって、元付業者になることは収益が安定するという点から、非常に価値のあることなのだ。
よって、不動産営業は売主を見つけ、元付業者になることが一番重要となっている。
スキルを身につけたら、最終的には売主を発掘できるようになることが、優秀な営業担当者として認められるポイントだ。
未経験者向け不動産営業のコツ
不動産営業を開始するといっても、いきなり売主を見つけられるようにはならない。
不動産所有者のところに行って「お宅の不動産を売って下さい」といっても、まず売ってくれることはないからだ。
売主を発掘するには、まずは売主の悩みを解決できるようなスキルを、
身に着けることが鉄則である。
この章では未経験者向けに不動産営業のコツについて解説する。
賃貸の客付けからスタートする
新人や未経験者が不動産会社に入社すると、最初は賃貸の客付けを任させるケースが多い。
賃貸仲介は一見すると売買仲介とは関係ないが、将来的には売買仲介の売主発掘に役立つスキルとなっていく。
例えば、空室が多いアパートの所有者に対し、
「アパートを売りませんか」
という提案をしてもなかなか響かない。一方で、「当社に空室の賃貸仲介をさせてもらえませんか」という提案に対しては、断られることは少ない。
埋まらない空室を埋めてあげられるようになると、アパート所有者から管理業務も任されることになる。
管理を任せられれば、そのうちアパート所有者から
物件を売りたいという相談も持ち掛けられやすくなる。
賃貸仲介は、不動産をたくさん保有しているオーナーと関係性を構築しやすいため、
賃貸仲介を習得することは将来必ず武器になる。
売主発掘につなげるためにも、まずは賃貸仲介を学ぶことが重要なのである。
売買の客付をマスターする
賃貸仲介をしっかり習得したら、次にマスターしたいのは売買の客付だ。
客付業者として、買主を見つけるスキルが身に付けば、いざ元付業者になったときにスムーズに両手仲介ができるようになる。客付業者は、元付業者に客付のあっせんを了解してもらえれば、誰でもなれる。
売買は客付から実践して学ぶのが基本であり、客付業者として自信がつけば、
元付業者としても売主の信頼を得やすくなる。
一般的に、売主は元付業者がそのまま客付業者になってくれるものだと思っていることが多い。
査定の時点で、売買が成立しやすくする方法やノウハウを売主にアドバイスできるようになると、媒介契約(仲介の契約のこと)が獲得しやすくなるのだ。
人脈を作りながら売主を発掘していく
不動産会社に入社したら、他社との人脈作りが大切となってくる。
売主発掘には「情報」が欠かせないので、様々な情報ルートを構築しておくことが必要だ。
特に、情報ルートは同業他社の人脈が必要となってくる。
同業他社に人脈があれば、例えば客付業者にもなりやすい。
知人の会社が元付業者となっている物件であれば、客付業者にしてもらうことも頼みやすいため、それだけでも営業成績は上がっていく。
また、他社では手に負えない物件を紹介してもらえる可能性があり、労せずして元付業者になれることもあるのだ。
そのため、不動産営業をしていくには、同業他社との横の繋がりが重要になってくる。
不動産会社に入社したら、実務のスキルを身に着けるとともに、社外での人脈構築も同時に行い、情報のパイプを太くしていくことをおススメしたい。
まとめ
以上、不動産営業の仕事内容や、営業の中でも売主を見つける重要性、不動産営業のコツを解説してきた。
不動産営業は、売買仲介では売主や買主に向けて営業し、賃貸仲介では大家や借主へ営業するため、その業務範囲は多岐に渡る。
中でも特に重要なのは、売主の発掘営業である。
不動産営業のコツとしては、以下の3つが挙げられる。
- 最初は賃貸の客付けからスタートする
- 次に売買の客付をマスターする
- 人脈を作りながら売主を発掘していく
スキルと人脈を少しずつ身に着け、不動産営業のエースを目指していただければ幸いである。