不動産所有者から物件の査定依頼を獲得できるサービス、不動産一括査定サイト。
売買仲介業を営む不動産業者の多くが、物上げツールとして不動産一括査定サイトを利用している。
看板広告や折込チラシ、ポスティングなどの、費用を先行投資する広告商材とは異なり、ほとんどの一括査定サイトが、問い合わせがあって初めて費用が発生するという成功報酬型の課金モデルを採用している。そのため、莫大な広告費をかけたのにも関わらず、問い合わせがこなかったということが一括査定サイトにおいては起こり得ない。
しかし、同じサイトから問い合わせを獲得しても成果をあげられる会社とそうでない会社が存在する。なぜだろうか?
今回は、不動産一括査定サイトで成功する会社と失敗する会社の特徴、また成功するために必要な考え方と査定サイトにおける目標設定の仕方について、まとめた。
現在不動産一括査定サイトを利用していて、うまくいかないと感じている方や、これから始めようか悩んでいる方にとって、この記事の内容が有益なものになってくれれば嬉しい。
不動産一括査定サイトで成功する会社の特徴
- 初期対応が速い
- 反響対応フロー(初期対応~長期追客)が確立している
- 費用対効果を測定している
初期対応が速い
不動産一括査定サイトは、1つの反響に対し、必ずと言っていいほど競合企業が存在するサービスである。
査定サイトで成功している会社は初期対応がとてつもなく早い。競合ひしめく人気エリアの場合、問い合わせがあってから1分以内に勝負が決まる。
査定依頼者は、1社目、あわよくば2社目以外の話は聞こうとはしない。
なぜなら「連絡の速さ」は査定依頼者にとって、不動産会社を評価するうえで一つ目の重要な評価ポイントだからである。
反響対応フロー(初期対応~長期追客)が確立している
不動産一括査定サイトで成功している会社は、反響の獲得から長期追客までの一連の流れを
“仕組み化”している。
具体的には、反響獲得後にまずは誰が対応するのか?どのように対応するのか?
訪問アポをとれた場合、どのような提案をするのか?アポが取れなかった場合、どのように追客するのか?
長期追客はどのように行うのか?接触頻度はどうするのか?メールやDMを送る場合、文章や内容はどうするのか?
“仕組み化”なので、上記内容を一部の社員だけができても意味がない。対応フェーズによって役割を分担し、抜かりのない運用サイクルを確立する必要がある。
もちろん、査定サイトの運用に関わる人数が多ければ多いほど、安定した土台を持つ仕組みとなるが、確立するまで時間がかかる。
少人数であっても、対応フローと役割さえ決めてしまえば、査定サイトを運用するに値する仕組みを作ることができる。
費用対効果を測定している
不動産一括査定サイトの費用対効果を細かく測定している不動産会社は非常に少ないだろう。
というよりも、費用対効果を測定するために必要となる値を把握していない会社がほとんどである。
「うちは測定している」という不動産会社でも、“媒介契約率が大体〇パーセントくらい”や、“〇件の反響をとって〇件受託できた”という、
感覚のみの曖昧な数値しか把握していない。
不動産一括査定サイトで成功している会社のすべてとは言わないが、成功企業の多くが細かな目標設定をし、それに対する結果を測定している。
また、一括査定サイトは広告商材なので、媒介契約率や媒介契約獲得数のほかに、媒介契約を1件獲得するためにかかったコストを示す媒介契約獲得単価(CPA)を把握する必要がある。
一括査定サイトで失敗する会社の特徴
- 初期対応が遅い
- 反響対応の流れが確立していない(追客をしない)
- 費用対効果を測定していない
初期対応が遅い
不動産一括査定サイトに、「査定依頼者と連絡が取れない」「査定依頼者に査定を断られる」という印象を持っている方は初期対応が遅い可能性が高い。
先ほど記載した通り、査定依頼者は1社目、あわよくば2社目以外の話は聞こうとはしない。
査定依頼者の中には、最初に連絡があった不動産会社に「他の会社から連絡があっても断ってください」と言われ、2社目以降には査定依頼自体をキャンセルする人もいる。
我々は一括査定サイトを利用している不動産会社に、反響が届いてから遅くとも5分以内に電話をするよう話している。
反響対応の流れが確立していない(追客をしない)
反響対応の流れが確立していないというのは、
反響が届いてから、誰が何をどのように対応するか
が決まっていないということである。このような仕組みが確立されていないと反響対応にムラが出てしまい、媒介契約どころか訪問アポイントの獲得すらままならない。
また、不動産一括査定サイトは、査定依頼者の不動産売却の流れの中で超初期段階のサービスであるため、反響獲得時に出遅れたとしても追客次第では再接触からの受託獲得がのぞめる。
以下は、査定依頼者の査定サイト利用後における媒介契約状況である。
2か月間で媒介契約を結んだ査定依頼者の比率は22.6%も増えている。(長期追客が重要)
費用対効果を測定していない
費用対効果を測定できていないと、“なんとなく電話がつながる”や、“なんとなく質がいい”など、曖昧なイメージでしかサイトの良しあしを判断できなくなってしまう。
実際に、我々の運営している査定サイトの加盟店と接触した際、「全然取れないイメージだよ」と言われ、改めて費用対効果を測定すると、思ったより悪くなかったということが多々ある。
また、不動産一括査定サイトは、問い合わせがあって初めて料金が発生する成功報酬型のサービスということもあり、どうしても通常の広告と同じように反響の獲得単価を気にしてしまう人が多い。
しかし、反響獲得が前提である一括査定サイトで測定すべき数値は、いくらで反響を獲得するかではなく、いくらで媒介契約をとれたかなのだ。
成功と失敗の基準
さて、ここまで不動産一括査定サイトで成功する会社と失敗する会社の特徴についてまとめてきた。
成功と失敗の基準は不動産会社によって勿論異なる。基準は異なれど、成功したか、失敗したかという結果を把握することは非常に重要である。
そのためには、あらかじめ基準となる目標を設定する必要があるのだ。
基準となる目標がないと成果の可否が分からないだけでなく、曖昧なイメージだけで、査定サイトを良いか悪いか決めようとしてしまうので非常に危険だ。
では、不動産一括査定サイトを利用するうえでどのような目標設定をすれば良いのか?
査定サイトにおけるKPI、KGIの設定
目標設定をするうえで重要となるのは、KPIとKGIの2要素である。
KPI= Key Performance Indicator「重要業績評価指標」・・・目標達成までのプロセスにおいて設定する中間指標(数値)
KGI= Key Goal Indicator「重要目標達成指標」・・・目標を達成しているか計測するための指標(数値)
KPIについての詳細は【売上アップ】「KPI」を作成し戦略的に目標達成にてまとめたのでこちらから。要は、最終目標であるKGIと、最終目標を達成するための途中経過目標であるKPIをそれぞれ数値で設定する必要があるということだ。
査定サイトにおけるKGIは、獲得した反響数に対する媒介契約に関わる数値(媒介契約獲得率や媒介契約獲得単価)であり、KPIは、反響数に対する訪問率や通電率、査定件数等になるだろう。
また、KGI、KPIを設定すると同時に、数値を測定する期間を決める必要がある。
一定の期間内に設定したKPIとKGIを達成できたか否かによって成果の可否は決定するのだ。
最後に
不動産一括査定サイトで成功する会社、失敗する会社の特徴および、成功と失敗を判断するうえで決めなくてはならないことについてまとめた。
査定サイトに関わらず広告運用する上で最も重要なのは、広告の費用対効果を正確に測定することである。通常の広告であれば、反響の獲得単価がCPAであることがほとんどだが、査定サイトのような成功報酬型のサービスでは、反響の獲得よりもっと先の数値(媒介契約獲得単価)をCPAとして効果測定すべきである。
正直、細かい数字の管理は面倒だと思うが、その作業を怠ってしまうと査定サイト成功への道は遠ざかる。