「売上を増やしたい」「集客したい」と思っていても
- チラシやポスティングの不動産集客はもう時代遅れ?
- インターネットを使わずに反響を獲得したいんだけど。
- いろいろ試したけど、どの集客手法が最適かは分からない
と感じている人は多いのではないか。
不動産集客の手法は、インターネットの普及により多様化した。その結果、インターネットを利用する集客、しない集客が混在し、より複雑になってきている。
選択肢が増えたからこそ、それぞれの集客手法の特徴を知っておき、目的に合わせて使い分けることが重要である。
そこで本記事では、私が不動産査定サイト運営会社の社員として、
独自の調査を積み重ねてきた経験から、不動産仲介会社が知っておくべきインターネットを使わない集客方法を5つ紹介する。
集客手法についての新しい発見や、現状行っている集客の見直しをするきっかけになれば嬉しい。
折込チラシ
折込チラシを使った集客とは
- 折込広告とは、新聞やフリーペーパーなどにチラシを挟み込み消費者へ届ける広告手法の一つである。今回は新聞折込について紹介する。
- 不動産業界では、主に販売物件の購入者を集客するために利用される。
折込チラシの特徴
- 広告のターゲット層は新聞の購読者であり、50代以上が購読者のおよそ50%の割合を占める。
(引用元:nippon.com「新聞、2000年と比べ1000万部減 : 読者層は高齢化」) - 配布するエリアを市区町村単位で指定することができる。
- 発注方法はさまざまで、チラシデザインだけ自社で作成し、印刷だけ依頼する方法や、
デザインのイメージをチラシ会社に伝え、その後の工程をすべて依頼する方法もある。
折込チラシ集客を始めるまでに要する時間
- 折込チラシを配布するまでに要する時間は、チラシのデザインが完成しているか否かにより異なる。
- 最速であれば、起案から10日で配布可能(チラシのデザインが完成している場合)
折込チラシ集客でかかる費用
折込チラシ総費用=折込広告費+印刷費用
- 折込広告費は配布する地域によって、印刷費用はチラシのサイズや部数によって異なる。
<世田谷区の例>
・配布単価:3.3円/1部
・折り込み料金:33,000円(10,000部配布する場合)
・印刷料金:64,000円(フルカラー、10,000部印刷する場合)
(引用元: 屋外看板サーチ「折込チラシを配布する手順、料金やその手続きについて」)
折込チラシ集客の費用対効果
- 反響率:0.01~0.02%(10,000部配布して、1件~2件)
- CPA(反響1件を獲得するために必要な費用):50,000円~100,000円
折込チラシ集客のメリット
- 新聞の購読率が高い年齢層(50代の購読率は68.5%。60代の購読率は41.7%)に対してアプローチできるので、不動産売却の依頼を獲得したい場合は効果的。
=不動産の名義人が多い年齢層
(引用元:総務省「主なメディアの利用時間と行為者率」) - チラシの印刷料金と折込料金があらかじめ把握できるため、費用対効果を予測しやすい。また、ポスティングより安価で実施できる。
- 短期間での施策が可能。
折込チラシ集客のデメリット
- 新聞購読者にしかリーチできない。また、他のチラシに埋もれてしまい、閲覧されない可能性もある。
- 反響があった場合、商談に発展する見込度は高いが、件数は少ない。
- チラシ会社や新聞社でチラシデザインの審査がある。(折込広告取扱基準)
- 一度で大勢に拡散できるが、リーチできる対象が更新されにくい。また、配布先を細かく絞ることはできない。
ポスティング
ポスティングを使った集客とは
- ポスティングとは、チラシやパンフレットなどを人の手を使って住居の郵便受けに直接投函する広告手法。不動産業界では、販売物件の購入客や、不動産売却を検討しているオーナーに対しての集客手法として利用することが多い。
ポスティングの特徴
- 社員やパートが直接チラシやビラを投函する、もしくはポスティング業者に投函を依頼することができる。
- 折込チラシに比べ、投函先のエリアや建物を細かく選定することができる。
ポスティング集客を始めるまでに要する時間
- 折込チラシと同様、配布するまでに要する時間は、配布先とチラシのデザインが完成しているか否かにより異なる。
- 投函するターゲット、チラシのデザインさえ決まっていれば即日での実施が可能である。
ポスティング集客でかかる費用
- ポスティング総費用=印刷費用+配布料金
<都内でポスティング業者に配布を依頼した場合>
・配布単価:5円~8円/1部(配布物のサイズにより異なる)
・配布料金:50,000円~80,000円
(上記例は10,000部を配布する場合)
- 配布料金は、配布物・配布エリア・配布部数・配布期間により変動する。
- 印刷と配布をまとめて引き受けるポスティング業者は多い。
ラクスルで依頼すると10,000部で67,000円。(A4サイズ | 両面カラー | 東京23区の場合)
(引用元:ラクスル「ポスティングシミュレーション」)
ポスティング集客の費用対効果
- 反響率:0.02~0.03%(10,000部投函して、2件~3件)
- CPA(反響一件を獲得するために必要な費用):およそ22,000円~35,000円
ポスティング集客のメリット
- 折込チラシは新聞の購読者にしかリーチできない。一方、ポスティングでは、対象となるエリア、物件の種類(一戸建て、マンション棟)、物件の価格(マンションのみ)などによりターゲットを細かく選定することができ、ピンポイントなアプローチができる。そのため、新聞の購読率が低い若い世代からは買い反響の獲得をしやすい。
- ポストに投函されるので一度は手に取ってみてもらえる可能性が高い。
- 同業種の配布物が混在すると反響率が落ちる場合があるので、それを加味して同業種からの依頼は受けないというポスティング業者もある。
- 投函先を細かく選定できることにより、計画的にアプローチができるので広告としての運用がしやすいかつ、折込チラシの配布と比較すると、顧客の反応が良い。
ポスティング集客のデメリット
- 決められた時間で配布できる数に限りがあるので、配布時間がかかる(自社社員が、毎日3時間配布し続けた場合、10,000部配り終えるのにおよそ16日かかる)
- 折込チラシに比べ、配布単価が高い。(業者に依頼する場合)
- チラシの投函を望まない人からはクレームが発生する可能性がある。また、ポスティング業者が配布したとしても、クレームは配布の依頼主に来るケースがほとんどである。
郵送DM
郵送DM(ダイレクトメール)を使った集客とは
- DM(ダイレクトメール)とは、個人あてに直接メッセージを送付すること。
- 広告媒体としてはFAXDM、メールDM、郵送DMなど複数あるが、今回は郵便やメール便を利用し送付する郵送DMについて取り上げる。不動産業界では、新規販売物件の宣伝や、売却相談会やセミナーの招待を目的として利用することが多い。
郵送DM(ダイレクトメール)の特徴
- 送付先となる個人の住所や名前などの個人情報を持っている必要がある。
- A4サイズのはがきや圧着はがきが送れる。A4サイズのものは、普通サイズのはがきの4倍大きいので目につきやすい。また、他の郵便物と差別化できるようなデザインを用いた送付物が作成できる。また送付物のクオリティによっては、効果に大きな差が出る。
- 印刷から郵便局への差出しまでを、まとめて依頼できるDM会社もある。
郵送DM(ダイレクトメール)集客を始めるまでに要する時間
- 送り先と、発送する郵便物のデザイン、内容が決まってさえいれば、発送会社によっては即日発送できるところもある。
- リストを作成するにあたり、個人情報の収集に時間がかかる。個人情報は一度接触したことのあるお客様の他に、公的な証書である不動産登記簿を元にデータベースを作成している会社も多い。
郵送DM(ダイレクトメール)集客でかかる費用
- 総郵送DM費=制作費+印刷費+発送作業費+送料
- DM会社のプラン、依頼する内容、送付物によって費用は変動する。
- 総費用から逆算すると 1通当たりの一般的な目安は、
はがき:100円程度 封書:200円程度
(参照元:メールカスタマーセンター株式会社「DMの企画〜発送にかかるコスト」)
郵送DM(ダイレクトメール)集客の費用対効果
- 反響率:0.5~1.0%(1,000部送付して、5件~10件)
- はがきの場合のCPA(反響一件を獲得するために必要な費用):10,000円~20,000円
- 封書の場合のCPA(反響一件を獲得するために必要な費用):20,000円~40,000円
郵送DM(ダイレクトメール)集客のメリット
- 個人情報を持っていることが前提ではあるが、ポスティングや折込チラシと比べると、送付先となる個人の宛名が入るので手に取ってもらいやすい。
- 発送できる郵送物は、圧着はがきやポストカード、封書など多岐にわたるので、内容やデザインを工夫しやすい。よって視覚に訴えることも可能。また、封書であれば複数の書類を同封できるので、効率的にアプローチできる。
郵送DM(ダイレクトメール)集客のデメリット
- 個人情報を取得するのが困難。別途リストを購入するのであれば費用がかかる。
- 発送業者に依頼した場合、コストが高くなる。
- 封書での送付の場合、開封されない可能性がある。
- 企画から発送までの工程が多いため手間と時間がかかる。
飛び込み営業
飛び込み営業を使った集客とは
- 飛び込み営業とは、個人宅もしくは事業所に直接訪問し、その場で直接営業活動をする行為である。
- 不動産業界では主に、買い手(購入客)の獲得や用地、不動産の仕入れ等を目的として、取り組まれている。集客の手法とは言えないが、マーケティング手法の一つとして当記事で紹介する。(当記事では個人宅への飛び込みについて記載する)
飛び込み営業の特徴
- 新築物件の販売を行う会社は、買い手の集客として、建売業者や買取再販業者は用地の仕入れとして取り組んでいる。
- 基本的には、根性論をベースにおいた手法なので、近年は積極的には行われていない。
飛び込み営業を始めるまでに要する時間
- 飛び込み先が決まっていれば、即日で実施できる。
飛び込み営業でかかる費用
- 営業担当者の交通費や人件費が直接かかる。逆を言えば、それ以外はコストがかからない。
飛び込み営業の費用対効果
- 商談まで持ち込める確率:1.0%(100軒に1件)
- CPA(商談一件を獲得するために必要な費用とする):約15,000円~30,000円
(営業日が20日、1日に回れる件数を50~100件、営業担当者1人における月給が300,000円とした場合)
飛び込み営業のメリット
- 直接対面できるので打ち解けやすい。
- 低コストで実施できる。
- 顧客と直接対面するので、現場でしか得られない耳寄りな情報が手に入る可能性がある。
(知り合いの地主が、「土地を売ろうかな」と言っていた等)
飛び込み営業のデメリット
- 物理的に訪問できる数に限りがあるため、効率が悪い。また、数が勝負ではあるが9割以上が空振りとなる。
- 特定商取引法によって、訪問販売のルールが複数決められているため、これに違反すると最悪、業務停止命令を受けるなどのリスクを伴う。(事業者取引の場合は適用されない)
- オートロックやセキュリティの強化により訪問自体ができない物件が増えている。
- 心身ともにハードな仕事であるため、退職希望者が増える可能性がある。
セミナー、相談会等
セミナー、相談会等での集客とは
- 不動産業界でいうところのセミナー、相談会は、主に不動産会社が主催するイベントである。
- 売買、投資、住宅ローン、相続などにまつわる問題を、個人が直接不動産会社に相談したり、投資や相続に関しての知見やアドバイスを不動産会社が個人に提供する場所である。
セミナー集客の特徴
- 特別な会員制のセミナーでなければ、基本的に参加者の費用は無料。
- 相談会を開催するにあたり、参加者の集客と会場の準備をする必要がある。
- 会社の強みを直接伝えることができるため、参加者と信頼関係を築きやすく、契約獲得に至る可能性が高い。
セミナー集客を始めるまでに要する時間
- 開催する相談会やセミナーの規模にもよるが、準備としては、会場の確保、参加者の集客、テーマ決めなど。これらを考慮して、開催までは1か月程度を見ておいたほうがいい。
セミナー集客にかかる費用
セミナー集客総費用=場所代+参加者集客費用
- 自社以外で場所を借りる場合は、コストがかかる。
民間企業が提供している貸会議室の相場は、1時間7,000円(約12席の部屋の場合)。
それに対して公民館や市民会館であれば、1時間500円程度から借りられる。
セミナーの費用対効果
- 何組が来場してくれるかは事前の集客により結果が異なる。
- CPA(セミナーに1組集客するために必要な費用):約12,000円~15,000円
セミナー集客のメリット
- ニーズが明らかな顧客へ直接自社の強みを伝えることができるので、そのまま商談もしくは契約までと話が発展しやすい。
- 新規顧客獲得はもちろんのこと、一度会ったことのある不動産会社であれば、顧客は親近感が沸くため、追客次第で未来の契約につながる可能性が高い。
セミナー集客のデメリット
- 開催するまでに時間と労力がかかる。
- 参加者の集客がうまくいかなかった場合は、労力に対しての効果が得られない。
- 開催日には他業務の時間が大きく削られる。
最後に
インターネットを使わない5つの集客方法を取り上げた。この記事を通して新たな発見があれば嬉しく思う。
記事を読んでもらえばわかるように、それぞれのやり方にそれぞれの特徴があり、会社によって集客方法との相性は異なる。
業態や社内の状況を鑑みて、自社に最も適した集客方法、広告戦略を見つけてほしい。
不動産の集客で成功する秘訣は、正しい目標設定と試行錯誤の繰り返しである。
なんとなく「〇件反響が来た」ではなく、費用・期間・反響数・反響単価を算出し、都度費用対効果を省みる必要がある。
また、現在実施している集客手法があるならば、果たして本当に効果のある運用ができているか、再度見直してみてはどうだろうか。
例えば、折込チラシやポスティング、郵送DMはチラシのデザインや内容により効果に大きな差が出る。
一回目から納得のいく効果を出すことは相当難しいため、四半期、半期、年間での長期的な計画を立て、最適な広告運用を行ってほしい。