いきなりだが、「ググる」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
ググるとは、Google社が提供するweb上の検索エンジンを使い、検索をすることをいう。不動産の物件情報も、「ググる」ことで誰でも簡単に集められるようになった。
また、スマホの急激な普及により、情報を得たい時は、インターネットで検索するのが当たり前になった。
この風潮を利用し、不動産集客を成功させている不動産会社があるのをご存知だろうか。
いまやインターネットを使った不動産集客はより重要になってきている。
そこで本記事では、インターネットでの不動産集客における必要性や目的などについて紹介していく。
従来の不動産集客
これまで不動産集客といえば、新聞の折込広告や不動産情報誌への掲載をするのが一般的であった。いわゆる紙媒体を利用した集客である。
これらに自社が扱っている物件情報や会社情報を掲載することで、自社の認知度を高めたり、集客することができたのである。
また、不動産会社が独自に物件チラシを作成し、営業員がそれを物件の近隣へポスティングしにいく「手巻き」は、昔ながらの集客方法である。
特に不動産売買においては、物件が所在する近所の住民が「家族のために隣の家を買う」というケースが多く、チラシの手巻きは一定の効果があった。
ところが近年、不動産業界での営業活動は大きく変化し始めている。
驚異的なスマートフォンの進化と普及
2008年にiPhone 3Gが日本で発売されてから、スマートフォンは国内でも爆発的に広まり、
いまではパソコンを上回るほどのシェアとなった。
総務省が公表している「情報通信機器の保有動向」によると、2017年の調査で分かった世帯における情報通信機器の保有状況は、
モバイル端末全体が94.8%、パソコンが72.5%となっている。
(引用元:総務省「情報通信機器の保有状況」 )
またマイナビ賃貸が大学生と社会人を対象に、部屋探しの際、賃貸情報サイトや不動産会社のホームページを利用したかという調査を行った。その結果、利用したという大学生は全体の70.6%、社会人は80.4%という結果になった。
(引用元:マイナビ賃貸「住まいと暮らしのコラム/利用したツール」)
このように不動産情報をインターネットから入手している顧客は非常に多くなってきている。
不動産ポータルサイトの登場と不動産集客の変化
かつて不動産情報は、雑誌や新聞を見たり、街の不動産屋に来店をしなければ得ることができなかった。
しかし、1990年代後半に、「SUUMO(スーモ)」の前身となる「住宅情報On The Net」や「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」が登場した影響で、顧客は不動産情報をインターネットでチェックできるようになったのである。
(引用元:スマーブ「元祖「不動産テック」? 物件情報ポータルサイト・メディアの今むかし」)
不動産ポータルサイトは今や多くの人が利用している。
不動産ポータルサイトとは膨大な数の物件情報が登録されているインターネット上の不動産情報ページである。有名なものだと、athome(アットホーム)やLIFULL HOME’S(ライフルホームズ)、SUUMO(スーモ)などがある。
不動産ポータルサイトでは、物件情報はもちろん、不動産会社の連絡先、写真や間取り図なども見ることができる。またスマートフォン対応しているので、小さな画面でもストレスなく閲覧できる。
今でも雑誌や新聞から家探しをしている人は一定数存在する。
しかし、家探しと言えば「スマートフォンで検索」という動きが浸透してきているのだ。
スマホで検索から来店までの流れ
- スマホやパソコンで物件情報を検索
↓ - 複数の物件情報を比較して検討
↓ - 物件情報を掲載している不動産会社へ問い合わせる
↓ - 不動産会社から問い合わせ客に連絡
↓ - 直接物件の現地、もしくは不動産会社へ行く
1~3まではスマホで完結できるので、見込み客はほとんど抵抗無く不動産会社へ問い合わせることができる。
不動産ポータルサイトでは、複数の業者が同じ物件情報を掲載することができる。
そのため、自社の掲載物件に問い合わせをしてくれるような他社との差別化が必要である。
4と5は従来通りの流れだが、見込み客はサイト上で複数の物件情報を見て検討しており、現地確認のためだけに内見するケースも多い。その場合は即契約に至る可能性が高い。
これまで、紙媒体での集客がメインだったので、不動産会社に接触するにも、電話もしくは実際に店舗へ行ってみるという選択肢しかなかった。しかし、スマホで多くの情報を得られるようになった今では、気軽に様々な物件を調べることができるようになった。
それにより、顧客の「不動産会社に対して問い合わせをする」という心理的な障壁もなくなってきていることは大きな変化である。
インターネットを利用した不動産集客例
従来のような紙媒体のみで物件情報を提供するのではなく、インターネットを利用しているユーザーに向けて情報を提供することは、反響獲得の点でも優れている。
自社サイトで会社情報を発信
多くの不動産会社が自社のホームページ(以下、自社サイト)を作り、インターネット上で企業情報を発信している。
事務所や店内の写真、従業員の写真、企業ブログなどを自社サイトに掲載することで、サイトを見た人に「情報量が多い」「信頼できる」などのイメージを与えることができる。
また、物件情報のデータベースを自社サイト内に構築して、物件検索ができるシステムも効果的である。
なぜなら、どのような物件を扱っているかにより「この地域に強い」「この物件に強い」という印象を与えることができるからである。
さらに、自社サイトのSEO対策がうまくいけば、問い合わせの導線としても存在価値がある。
自社のブランディングに加え、具体的な問い合わせの獲得を望める自社サイトを持つことは重要である。
不動産ポータルサイトから反響獲得(物件掲載型)
不動産ポータルサイトには、多くの不動産会社が物件情報を登録している。
サイトによって異なるが、掲載に関する料金体系としては、定額制(例:月額8,000円で物件情報を登録し放題)や従量課金制(お問い合わせ1件毎に費用が発生する)などがある。
不動産ポータルサイトには莫大なコストを駆使した圧倒的な集客力があるので、それを生かして反響の獲得をしている不動産会社は非常に多い。
Google(東京都×賃貸での検索結果)
(上の図は「東京都 賃貸」でGoogle検索した際の表示結果である。上部広告枠は不動産ポータルサイトが独占している。)
もちろん、一般の人は無料で物件情報を閲覧し、問い合わせすることができる。
不動産ポータルサイトから反響獲得(情報獲得型)
インターネットを利用した不動産集客は、賃貸の分野だけにとどまらない。
今では、不動産の売却を検討している人向けの専用サイトも存在している。
不動産一括査定サイトは、利用者が、複数の不動産会社へ同時に不動産の売却査定を依頼できる仕組みになっている。
利用者側のメリットとしては、1度の査定依頼で複数の不動産会社から見積をもらえるため、比較・検討が容易にできることである。
一方で、不動産会社側のメリットとしては、本来、自社で獲得するのは困難である不動産の所有者情報を、サイトに加盟しているだけで獲得できることである。
料金体系としては、査定依頼の件数に対して費用が発生する従量課金制をとっているサイトが多い。
独自のコンテンツを充実させた不動産系メディア
不動産系メディアは、企業情報を掲載した自社サイトや物件情報を網羅した不動産ポータルサイトとはサイトの目的が異なる。
不動産系メディアは、主に見込み客向けに不動産のことを伝えていく独自コンテンツによって構成されることが多い。
検索されやすいキーワードが多く入った記事や、注目を集めやすい内容の記事を掲載して、
読者を獲得していくのが不動産系メディアの主な狙いである。
例えば「賃貸マンションの借りかた解説」や「引っ越しを早く終わらせる方法10選」といったお役立ち情報を載せ、見込み客の不動産に対する理解と契約への決断を促すなどである。
メールマガジンの発行
メールマガジンの実施は、定期的な配信により顧客に自社の存在を思い出してもらい、物件探しの活動を積極的に行ってもらうのが狙いである。
メールマガジンを配信するためには、配信先となるメールアドレスが必要である。
獲得方法としては、主にwebサイトを訪れてくれた顧客に対して、便利ツールの利用やお役立ち資料請求と引き換えに登録してもらうのが一般的である。
■まとめ
紙媒体での広告は、不動産会社がピックアップした物件情報を掲載している場合がほとんどであるため、「受動的な情報」というイメージが強いのではないだろうか。
一方で、web上に掲載されている情報は、利用者が希望している物件情報を自ら検索することで、「自分が能動的に物件探しをしている」という感覚になりやすい。これはインターネットが普及していなかった時代には、存在しなかった現象であり、顧客の“不動産”に対する新しい行動である。
紙媒体での集客活動は基本的に「攻め」の広告であり、企業側が主体で行動せねばならなかった。しかしインターネットを利用した広告は、顧客に行動させることで企業は“待ち”の状態でいることができる。
これにより、不動産会社の集客活動は大幅に効率化した。
今後、不動産集客においても、インターネットの発展から目を背けることはできないだろう。